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数奇な運命に翻弄された孤高のムーブメント「エル・プリメロ」の歴史を訪ねる

2017年1月13日

スイス時計界屈指のマニュファクチュール、ゼニス。このブランドが大切に作り続けるフラッグシップキャリバー「エル・プリメロ」の足跡を知るべく、ル・ロックルにあるファクトリーを訪れました。

 

創業者が一代で築き上げた広大なマニュファクチュール工房

ゼニスの工房のあるル・ロックルは、隣町のラ・ショー・ド・フォんと共に、都市建築及び時計製造業を軸とした都市計画が評価され、2009年にユネスコ世界遺産に認定された場所です。この栄誉について、1865年に創業したゼニスが深く関わっていることは言うまでもないでしょう。

 

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街中にある18棟の建物が並ぶ区画が、ゼニスのファクトリー。すべて創業者のジョルジュ・ファーブル=ジャコが一代で築いたもので、これらの建物はブランド黎明期から続く歴史そのものです。

 

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ファクトリーを案内してくれたのは、ゼニスに携わって18年というポール・ワース氏。セールスマネージャーなどを歴任し、現在は世界中からやってくる訪問者に工房内を案内するホスピタリティ役を務められています。

 

「ジャコは、他社に先駆けて職人をひとつ屋根の下に集める『マニュファクチュール』を推進した人物でした。時計製造にいち早く電力を取り入れたのも、彼の功績です。創業当初は小さな建物ひとつだけでしたが、40年にわたって拡張し続け、遂には1000人規模の従業員を抱える企業へとゼニスを成長させたのです。今日は、その建物のひとつにある屋根裏部屋を特別にご案内します。そこは、私たちのヒーロー、シャルル・ベルもにゆかりのある場所で、ほぼ昔の状態で手つかずのまま残っています」

 

エル・プリメロ再誕の地、屋根裏部屋へ

シャルル・ベルモは、クロノグラフムーブメントの製造を専門としていた、かつての技術者。世界で初めて一体型の自動巻きクロノグラフにして、毎時3万6000振動というハイビートも実現した1969年発表のエル・プリメロCal.3019PCHの開発に、原案から携わった人物です。

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「ゼニスは、1970年代からのクオーツ時計の台頭によって経営難となり、アメリカ企業に買収されました。それだけでなく、1975年にはクオーツ時計の製造に専念し、機械式時計に関するものはすべて手放すように命ぜられたのです。この決定に人知れず逆らったのが、シャルル・ベルモでした。彼は、エル・プリメロに関する工具や図面、金型を夜な夜な弟と二人で屋根裏部屋へ運び込み、それを隠したのです」

 

屋根裏部屋は三角屋根の建物の最上部にあり、石の螺旋階段を使って入ることができます。

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重さ1トン以上に及ぶ150個の金型を運ぶため、硬く冷たい石階段を幾度となく往復したシャルル・ベルモに敬意を表しながら、同じ階段を踏みしめて屋根裏部屋へと向かいました。

 

内部は1970年代当時の状態が保たれており、書類や工具が雑然と置かれたまま埃をかぶった状態。タイプされた書類の日付も1976年となっています。

 

さらに奥に進むと金型が置いてある棚が見えます。重みに耐えてきた棚板のたわみからも、長いこと手つかずだったことがわかります。

↑ポール氏が示す棚の奥こそ、シャルル・ベルモがエル・プリメロの金型や工具などを一式隠した場所

↑ポール氏が示す棚の奥こそ、シャルル・ベルモがエル・プリメロの金型や工具などを一式隠した場所

 

ゼロからの再スタートをも導いたゼニスのヒーロー

ゼニスの方針が再び変わるのは、1978年のこと。経営がスイス資本の会社に移り、機械式時計の再生が望まれるようになってからでした。しかし、すでにかつての技術者はゼニスを去ってしまった後。資料も残されていなかったそうです。

 

それでも、1984年にはエル・プリメロの製造再開が決定。シャルル・ベルモは満を持して9年間隠し続けてきた工具や図面、金型などを公開し、製造ノウハウと共に新しい技術者へと伝承していきました。

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↑現在のゼニスの時計職人

 

シャルル・ベルモの偉大な功績はこれからも語り継がれる

時計界を席巻するほどの一大発明だったにも関わらず時代に翻弄されたエル・プリメロですが、シャルル・ベルモによって九死に一生を得ました。そして、現在はゼニスのフラッグシップムーブメントとして、昔と変わらずル・ロックルで量産されています。

 

エル・プリメロのすごいところは、その拡張性にもあります。このムーブメントは、シャルル・ベルモの遺志を受け継ぐ職人の想像力によって、「アカデミー クリストファー コロンブス」を筆頭とする複雑系から三針仕様の「シノプシス」まで、様々に発展中。ファクトリーに導入された最新鋭の設備を駆使しながら、まだ見ぬエル・プリメロの開発も続けられています。

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↑グラビティ コントロールを搭載するクリストファー コロンブスの試作機

 

ポール氏が「私たちのヒーロー」と連呼していたように、シャルル・ベルモは確かにエル・プリメロを二度も作り上げた英雄でした。彼の功績がなければ、きっとゼニスは現在のような発展を遂げることができなかったでしょう。

↑ゼニス「エル・プリメロ 410 トリビュート トゥ シャルル・ベルモ」118万8000円/Ref.03.2097.410/51.C700 シャルル・ベルモの功績に敬意を表して制作された世界限定1975本モデル

↑ゼニス「エル・プリメロ 410 トリビュート トゥ シャルル・ベルモ」118万8000円/Ref.03.2097.410/51.C700
シャルル・ベルモの功績に敬意を表して制作された世界限定1975本モデル

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